福岡高等裁判所 昭和29年(ネ)250号 判決
控訴人は、原判決を取消す、被控訴人飯塚市議会が昭和二十八年三月十七日第二回定例議会においてなした予算総額二百五十万円をもつて自動車一台を購入する旨の議決の無効なることを確認する、訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする、との判決を求め、被控訴代理人は、主文と同旨の判決を求めた。
当事者双方の事実上の主張及び証拠の提出、援用、認否は、すべて原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する。
三、理 由
まず本訴の適否について判断することとする。
控訴人が飯塚市住民であること及び被控訴人飯塚市議会が昭和二十八年三月十七日の第二回定例議会において予算額金二百五十万円をもつて自動車一台を購入する旨の議決をなしたことは当事者間に争がなく、控訴人の本訴訴旨は、右議決は市議会議員が私利を図る目的をもつてなした権利の濫用であり、しかもその内容は飯塚市の現状を無視した公の秩序に反するものであるから、無効であるとして、これが確認を求めるものであることは、控訴人の主張自体に徴して明である。
ところで一般原則として、地方議会は普通地方公共団体の意思決定機関であつて、議会の議決そのものは、それ自体として外部に対して直接法律上の効果を及ぼすものではなく、執行機関において該議決にもとずき課税その他の行政処分をなすことによつて、はじめて外部に対して法律上の効果を生ずることとなるのであるから、議会の議決そのものは執行機関の行う行政処分の前提要件たるに過ぎないものというべきである。従つて被控訴人飯塚市議会のなした本件予算議決も、単にそれだけでは市住民の具体的権利義務に直接影響を及ぼすものとはいい難く、執行機関たる市長において右議決を執行するに至つて、はじめてこれに直接関係を生ずるに至るものと解すべきである。それ故に本件市議会の予算議決の内容が控訴人主張のようであるとしても、議決それ自体は未だ訴訟(一般民事訴訟たると行政訴訟たるとを問わず。)の対象たるべき裁判所法第三条にいう「法律上の争訟」には当らないものと断ずべきであつて、また本件のような市議会の議決に対し単にその効力を争う趣旨の訴を認めた特別の規定も存しない。
しからば本訴は不適法というべきであるから、進んで他の点について判断を加えるまでもなく、これを却下するの外はない。
よつて右と同趣旨に出た原判決は相当であつて本件控訴は理由がないから、民事訴訟法第三百八十四条、第八十九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 野田三夫 川井立夫 天野清治)